環境ジャーナリストの会のページSun・・・stainableへ ― Great Accelerationと気候危機を乗り越えて

2021年02月15日グローバルネット2021年2月号

埼玉大学名誉教授、早稲田大学招聘研究員
外岡 豊(とのおか ゆたか)

Great Acceleration

人新世(Anthropocene)はノーベル化学賞科学者パウル・クルッツェンが地球の異常に耐えかねて、ある学会で突然わめきだしてできた新しい地質時代区分名である。その背景にGreat Acceleration(人類活動の急加速)がある。地質時代を区分すべきほどに地球がおかしくなっており、その原因は資本主義経済だとしてCapitalocene(資本新世)とも呼ばれる。

「極端な時代」

イギリスの歴史家エリック・ホブズボームは20世紀を極端な時代(Age of Extremes)と表現した。人類の長い歴史において20世紀から現在は「人新世」の異常時代である。そこへ1年前から新型コロナウイルス感染症禍が発生し、現在は人新世という1世紀単位の異常と世界感染症の短期異常とが重なっているが、日本では原発事故事後処理中という異常も加わっている。火山爆発、巨大地震のような次なる異常が重ならないことを祈りたい。

新新約聖書

人類は神から地球の管理を任されたと聖書に書いてあるが、こんな異常を起こしていては管理者の資格はない。人類は地球の間借人であり、この異常を正常に戻して神に返さねばならない。人新世の地層を薄い層で終わらせますと神に誓う新新約聖書を書くべき。

Climate Emergency 気候非常事態

地球温暖化は気候変動問題といわれるように変わってきたが、台風が大型化したり、山火事が増えたり、ここ数年顕著に危機的な状況になってきてClimate Emergency(気候非常事態)を迎えている。日本で気候非常事態宣言をする場合、英語でClimate Emergencyとしておかないと世界的に公認されないので注意。

若い世代のグレタ・トゥーンベリが世界的な対応を訴えているようにカーボン・バジェット(1.5℃以内に留まる累積排出量)は残り8年余り(2019年当時)とされており、昨今の被害発生の顕在化は2030年排出ゼロ達成が必要かと疑わせる事態である。

目標達成へは2030年までが肝心だといわれ世界的に大幅な排出削減緩和策が必須、大型台風、集中豪雨等に備えて日本での適応策も喫緊の課題である。

目標達成に向けて

とにかく排出削減をしなければならないが、気候危機の現在においては京都議定書当時とは主役が入れ替わっている。ここで求められるのは、脱化石燃料(同時に脱原発)、再生可能エネルギー化、脱セメントだけでなく、経済活動そのものの削減が主役になる。脱大量生産、脱世界長距離物流、脱近代科学工業、脱巨大都市、さらに脱資本主義経済、脱(上場)株式会社、脱金融商品高速電子売買、脱近代経済学、脱覇権国家間経済競争、が求められる。

私は21世紀初頭、人類社会はV字の歴史的大転換点になる、そうならなければならないと言ってきた。ペティ・クラークの法則、エンゲル係数、雇用と所得分配、都会と田舎の関係等々、これまでの常識を覆すことにもなる。衣食住の基本を重視し、新農本主義(全員農業)、新百姓(複数職能)、互恵社会化、新コミュニティー等を提案している。

目標達成に向かう世界中の実践は、異常の頂上からの緊急下山のようなもの、急ぐとも安全な下山への(移行リスクといわれる社会の急変に伴う痛みを和らげる)配慮を要するが、早めの積極対応が近い将来予想される大経済危機再来への安全網ともなるだろう。

Sun・・・stainable

持続可能という言葉は多用されて現在では意味がふやけているが、私の定義では真の持続可能性は「地球の自然条件が変わらない限り、現在以上の人口を永続的に維持できる人類の生き方」である。風力もバイオマスも元は太陽エネルギーであり、それらを含めて主に太陽エネルギーに依存した持続可能社会に向けて、太陽と持続可能をつないだ新語Sun・・・stainableを創った(1999年)。気候変動問題の克服はSun・・・stainable社会への第一歩である。詳しくは著者ホームページを参照

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