フォーラム随想学校の屋上で発電を

2022年01月14日グローバルネット2021年12月号

日本エッセイスト・クラブ理事
森脇 逸男(もりわき いつお)

一つ提案したい。国内の小、中、高校、あるいは大学、各種学校の校舎の屋上を、太陽熱発電、あるいは太陽光発電の場にしたいというプランだ。

この提案を思い付いたのは、いつか新聞に、どこだったかは忘れたが、小学校の屋上スペースに水田を作って、学童が田植えをし、実りの秋に稲刈りをしたという記事が、見事に実った稲束の写真入りで載っていたからだ。

もちろん小学校の屋上といっても、木造校舎では水田などとても無理だろうが、校舎がコンクリート造ならそれほど手間はかからなかったのだろう。

と同時に考えたのは、屋上に水田ができるなら、太陽熱・光発電のパネルを設置することも可能だろうということだ。もともと太陽熱・光発電は広大な土地を必要とするので国土の狭いわが国では設置は難しかったようだ。適地を作るために土地改良をすることで、やがて山崩れなど予期しない災害になる可能性も無いではない。しかし、近年は屋根に自家用の太陽熱・光発電のパネルを設置する民家も増えているようだ。学校なら47都道府県のどこにもある。多くはコンクリート建築だろう。

発電した電力は、蓄電池でためておいて、その学校で使ってもいいし、電力会社に売ってもいい。小学校から高校までの理科の教材にももってこいだ。

そうして学校での発電を推進したいと思うのは、多少でも地球温暖化対策、「脱炭素」の動きに協力したいからだ。

何しろ地球温暖化はどんどん進んでいる。数年前から変な天気が続く。日本だけでなく世界的に、酷暑、台風、集中豪雨、洪水、大雪、あるいは極度の乾燥と異常気象の進行は止まらない。その原因は止まるところを知らない温暖化ガスの垂れ流しだ。

ことに電源の主力を石炭火力発電に頼っているわが国は、温暖化対策に後ろ向きだとして評判が良くない。国際NGO「気候行動ネットワーク」に、「化石賞」の2位に選ばれたほどで、やはり石炭を燃やして温暖化ガスを大量に発生させる行動は、いずれ世界中のほとんどの国から厳しい糾弾の的になるに違いない。

温暖化で南極や北極の氷が解けると世界中の海の水位が上がる。そうなれば、今でも標高が高くない南太平洋の幾つかの島国などは、必然的に水没し、その国民は居住地を失って、異国に漂流せざるを得なくなる。決して少数ではない亡国の民の怨みは、必ずやその原因を作った国に注がれることになるだろう。

もちろん、学校の屋上での電力生産は、たとえ全国の学校に広がったとしても、その量は知れたものかもしれない。まあしかし、「脱炭素」にソッポを向くか、あるいは極めてわずかな量であっても、それなりに国が脱炭素に具体的な姿勢を示すかは、世界の人たちにまったく正反対の印象を与えることになるだろう。要は行動だ。まず一歩を踏み出すことだ。

もちろん、「脱炭素」は太陽熱・光発電に限らない。風力発電も有力な対策だろう。校舎の屋上に風車を据えることも考えていいのではないか。

過去地球・人類を襲った危機は幾度もある。まだ人類が誕生する前には、小惑星が地球に衝突して恐竜が絶滅した。この小惑星の危機は、将来無きにしもあらずとなったようで、アメリカのNASAは先頃、来年秋、地球から約1100万キロに接近が予想される小惑星ディモーフォスに衝突させ、軌道を変えさせるための実験機を、先日打ち上げた。

現に2013年にはロシアのウラル山脈の麓のチェリャビンスク上空では直径17メートルの小惑星(隕石)が爆発し、住宅の窓ガラスが割れて、市民1500人がけがをするという災害が起きている。まさに「天災は忘れた頃にやって来る」だ。酷暑の季節は終わったが、酷寒はこれからだ。備えは忘れまい。

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