環境条約シリーズ 359化学物質・廃棄物関連3条約の合同締約国会議

2022年02月15日グローバルネット2022年2月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の出現とその爆発的な拡大以降は、多くの多数国間環境条約が締約国会議などを延期したり、オンライン方式に変えたりしてきている。化学物質・廃棄物関連3条約も同様の対応を取り、2021年5月にナイロビで開かれることになっていた合同締約国会議(本誌2013年8月)の開催方法を変更した。2ヵ月ほど遅らせて21年7月26~30日に緊急事項のみを扱う前半会合をオンラインで開催し、その他の事項を扱う後半会合は約1年延期して対面で開催することにしたのである。

7月に開かれた前半会合では、従来どおりに合同セッションとともに個別セッションとして、バーゼル条約の第15回締約国会議、ロッテルダム条約の第10回締約国会議、および、ストックホルム条約の第10回締約国会議が開かれた。その全体テーマは、「健康な惑星のための地球合意-化学物質および廃棄物の健全な管理」であった。合同セッションでは少なくとも2条約に共通する関心事項に限って、また、個別セッションでは当初の日程で期限切れになる事項に限って取り上げることとされた。具体的には、3条約すべてにおいて後半会合の場所・日程、および、それまでの暫定的な作業計画と予算措置、それに加えて、ロッテルダム条約とストックホルム条約においては下部機関の構成員の選任、さらにストックホルム条約においては財政メカニズムについてであった。

前半会合には、160ヵ国以上から約1,300人が参加した。そこで取り上げられた事項についてはそれぞれ原案に沿った決定が採択され、対面での後半会合は22年6月6~17日にスイス・ジュネーブで開催されることが確定した。したがって、前半会合に与えられた役割は果たされたのであるが、標準時間帯の異なる世界各地からの参加、不安定な通信状況、その他のオンライン特有の制約のため、審議がスムーズには進まない場面もあった。また、意見対立の大きい複雑な事柄について論議を尽くして合意を達成することは、オンライン方式では困難なことも露呈した。

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