環境条約シリーズ 360ストックホルム条約第10回締約国会議

2022年03月15日グローバルネット2022年3月号

前・上智大学教授 磯崎 博司

化学物質・廃棄物関連3条約の合同締約国会議の前半会合が2021年7月にオンラインで開催されたが、不安定な通信状況のため発言および通訳が途切れることもあり、また、複雑な事柄について論議を尽くした合意を達成することはできなかった(本誌2022年2月)。それは、特にストックホルム条約における財政メカニズムに関する議題において顕著であった。

同条約の財政メカニズムとしては、暫定運用中の地球環境ファシリティ(GEF)の信託基金を先進国が支持しているのに対して、開発途上国は当初よりモントリオール議定書の「多数国間基金」と同様のメカニズムを求めている。そのGEFは、ちょうど4年ごとの増資期間の切り替え時期にあり、22年7月からの第8次増資期間に向けて準備が行われている。財政メカニズムに関する上記の議題は、この第8次増資の検討過程に反映させるための、同条約からの報告書(実態評価および必要資金量)についてであった。

その審議においてイランは、GEFにおける政治的な差別と資金の無配分を指摘し、公平で普遍的な財政メカニズムの検討を求めて、それ以前に行われるいかなる決定にも反対することを表明した。パレスチナもその見解を支持した。同様に、多くの開発途上国がGEFの資金不足を指摘したが、一方で、残留性有機汚染物質に関する対策資金の必要、開発途上国の要望を第8次増資に反映させる必要も指摘された。また、財政メカニズムに関する根本的検討は、オンラインでは困難なため、対面会合で行うことが要請された。

審議を踏まえて一部修正した議長案が提示されたが、イランは賛同できないと述べた。その後、採決に当たり反対国がなかったので議長案は採択されたが、直後にイランは、技術的障害のため反対の意思が伝わらなかったとして採択に疑義を唱えた。中断して協議の後、採択は適法であったことが確認されるとともに、財政メカニズムに関する各国の懸念や要望などについては、後半の対面会合(22年6月)において議論することも再確認された。

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