フロント/話題と人岸本 聡子さん(東京都・杉並区長)

2022年08月15日グローバルネット2022年8月号

対話による自治を杉並から
~地域のつながりを育て、広げたい~

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岸本 聡子(きしもと さとこ)さん
東京都・杉並区長

7月11日、自転車で初登庁し、区民や職員に拍手で出迎えられた杉並区長・岸本聡子さん。学生時代に国際青年環境NGO「A SEED JAPAN」に参加した後、オランダの政策シンクタンクNGOで20年近く、世界各地の公共サービスの民営化に伴う問題や民主主義について研究してきた。

「生まれ育った日本に帰り、日本の民主主義のために働きたい」と考えていた岸本さん。当初、2023年の帰国を予定していたが、今年の3月、杉並区在住の知人に地域の課題を教えてもらう中で、区長候補を探していた「住民思いの杉並区長をつくる会」(住民の会)とつながり、同会から出馬要請を受けた。「対話を大切にする区政」を掲げて支持を集め、帰国から3ヵ月足らずで選挙戦を制した。

選挙で掲げた構想「さとこビジョン」は、住民の会が3?4年かけて目指す政策をまとめた「政策集」が基になったが、障がい者・高齢者施設などさまざまな現場で働く人びとを自らの足で訪ね拾った声を、さらに追加していったという。一方で岸本さんは「一人の人間が知り得ることには限りがある。自分の関心が高い分野や自分を支持する人たちの話は良く聞こえてくるが、それ以外の人たちの声は十分に聞けているとはいえない」と認める。「杉並区6,000人の職員を信頼して、より多くの市民のニーズを拾っていきたい」と、対話を継続するつもりだ。また、今回投票に行かなかった6割の住民の声を拾うために、公開討論や区民参加型の予算といった仕組みを通して、中高生や大学生も含めた市民一人ひとりが区政と自分の生活の接点を見出し、政策決定への参加意識が高まるような取り組みを広げていきたいという。

「地域のつながりが住民同士の対話や住民の自治を可能にする」と考える岸本さんは、中学校に上がるまでを大田区の商店街で過ごし、地域のつながりの中で育った。「杉並にはそれがある。杉並の宝を維持し、育て、広げていきたい」。

政策集には「気候市民会議の設立」を明記した。「他の先進自治体から学び、さらにその先を行くような取り組みにしていきたい」と胸を膨らませた。(克)

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