環境の本自然保護と平和構築~「地球」を世界遺産にする

2022年09月15日グローバルネット2022年9月号

自然保護と平和構築 ~「地球」を世界遺産にする

著●田中 俊徳

筆者は大阪大学で歴史学を修め、京都大学、北海道大学、東京大学、ユネスコ世界遺産センターなどで環境政策なども学んだ若き研究者。「戦争は自然保護の最大の敵」という怒りを込めた緊急出版だが、ロシアのウクライナ侵略に終わりが見えない状況の中で、21世紀の平和構築のために「地球を世界遺産にする」という著者の提案に、一筋の光明を見る思いで読み終えた。

南米のコンドル山脈の領有権を巡って紛争を繰り返していたエクアドルとペルーが、紛争地域を自然保護区にすることで合意した歴史的事例を紹介しながら、国を超えた環境保護区の設置や共同管理は生態系を守る科学的な正当性だけでなく、国家間の友好と平和、領土問題の段階的解決といった安全保障上の可能性も持っていると主張。「地球世界遺産」の現実味を強く感じた。(文化科学高等研究院出版局、1,300円+税)

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