環境条約シリーズ 371自然保護条約における特例的な分類区分とその基準

2023年02月15日グローバルネット2023年2月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

法律や条約は、規制対象について分類区分を設定し、それに応じた規制措置を定めている。実際、ワシントン条約は、分類区分(附属書Ⅰ~Ⅲ)に応じて異なる規制措置を定めている。ところで、附属書Ⅱの選定基準は、条約の適用対象=基盤的な下位区分(絶滅のおそれのある種または絶滅のおそれのある状態になるおそれのある種)には該当しない種の中から附属書Ⅱ掲載種に類似する種を(本誌22年12月)、附属書Ⅲの選定基準も基盤的な下位区分に該当しない種の中から国内基準該当種を(本誌06年6月、21年6月)、それぞれ拾い上げるという特例を定めている。

次に、ラムサール条約の分類区分としては、条約の適用範囲(基盤的な下位区分)である「湿地」の上に、各国による保全対象湿地、国際的に重要な湿地(各国による指定湿地=条約登録湿地)、危機的登録湿地が、順次、積み上げ構造で設定されている。そのうち、「国際的に重要な湿地」という分類区分の選定基準は、条約の適用範囲である「湿地」に該当しない場所(湿地の隣接地や島など)を含むことを認めている。

また、世界遺産条約も積み上げ構造であり、文化・自然遺産(条約の適用対象=基盤的な下位区分)、各国による認定遺産、登録世界遺産、危機的世界遺産という分類区分から成る。ところが、文化・自然遺産も登録世界遺産も選定基準は同一で、顕著な普遍的価値を有すること(第1条・第2条、第11条2項)である。さらに、このことは、文化・自然遺産は世界の遺産であること(第6条1項)、および、世界遺産登録されなかったとしても顕著な普遍的価値を有しないとは解されないこと(第12条)を定める規定によって強調されている。

以上のように、ピラミッド構造の分類区分が基本とされているが、ワシントン条約およびラムサール条約は条約の適用範囲という基盤的な下位区分にも属さないものを拾い上げるという点で、また、世界遺産条約は基盤的な下位区分の選定基準を上位区分にも適用するという点で、極めて柔軟な構造になっている。

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