フロント/話題と人ライザ・ナイノカ さん(グローバリゼーションに対する太平洋ネットワーク(PANG) )

2023年05月15日グローバルネット2023年5月号

G7環境大臣会合に向け、深海採掘の問題を伝える

ライザ・ナイノカさん
(グローバリゼーションに対する太平洋ネットワーク〈PANG〉)

4月半ばに札幌で開かれたG7気候エネルギー環境大臣会合に合わせてフィジーから来日し、東京と札幌でのセミナーに登壇、深海からの鉱物採掘の問題を訴えた。PANGは10年以上前から、太平洋諸国の視点から深海採掘問題に取り組み、ナイノカさん自身は2年半前から活動に加わった。深海とは水深200m以上の海域で、低い水温と非常に強い水圧、そして光の無い世界が広がる。環境変化が少なく、生物は存在しないように見えるが、実際には独特の生態系が発達している。

低炭素社会の実現に不可欠な蓄電池の製造に使われるニッケルや銅、コバルトなど多くの鉱物が、深海に多く存在することがわかっており、今年一部の国では商業採掘が許可される可能性があるという。採掘作業は巨大な重機で行われ、安定的で静かな深海の環境を強い光と騒音、土煙や化学物質でかく乱するため、非常に繊細な環境と生態系を破壊する恐れがある。生態系は深海から沿岸部までつながっており、人びとの暮らしを支える漁業などへの影響も懸念されている。

太平洋諸国では気候変動の影響が深刻化し、過去20年間でサイクロンはより規模が大きく、頻度も2倍になった。海面上昇による海岸浸食のため、フィジーでは約800のコミュニティが沿岸の家を離れ内陸部に移住する必要があるという。太平洋諸国は気候変動の責任が限定的であ影響を強く受け、その対策として先進国が進める再エネ促進のために、新たな被害を受けることになる。

PANGではグローバルな深海採掘の禁止を働きかけている。今年3月までに14ヵ国が排他的経済水域内、あるいは公海における深海採掘の停止を表明。フランスは領海内での禁止を決め、ドイツも国際的な一時停止を求めている。「G7議長国である日本もこの流れに加わってほしい」とナイノカさんは期待している。

日本での気候危機への関心の低さに驚いたというナイノカさんは、「フィジーでは海岸線を見るたび気候変動の進行を感じます」と言う。日本での原発や「汚染水」海洋放出の問題を帰国後にフィジーでも伝えたい。「連帯して問題を解決していきたい。私たちは共通の宝である海を介してつながっているのだから」。(ぬ)

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