フロント/話題と人上神田 健太さん(株式会社 家守舎桃ノ音(やもりしゃもものね) 代表取締役)

2023年08月15日グローバルネット2023年8月号

福島県で人・食・エネルギーが循環するまちづくりを展開

上神田 健太(かみかんだ けんた)さん
株式会社 家守舎桃ノ音(やもりしゃもものね)代表取締役

福島県北部、宮城県との境界に位置する国見町は人口約8,000人で米や桃・柿などの果物を中心に生産する農業地域。従来、観光産業が盛んではなかったこの町で、今、まちづくりの中心にいるのが上神田さんだ。

大学で都市計画を学んだ上神田さんは、まちづくりに携わりたいとの思いで東京都庁に就職。仕事の傍ら、東京の浅草・蔵前エリアを独自に研究し、若手デザイナーを支援する仕組みや古くからの「ものづくり」の伝統が、同エリアの発展の鍵であることを実感する。そして、自らが思い描くまちづくりを実行するために、奥さんの実家の建設会社に転職する形で7年前に国見町に移住。移住3年目に家守舎桃ノ音を創業。現在は町内のJR藤田駅前で、レストランとシェアオフィス等からなる複合施設「Co-Learning Spaceアカリ」とエコタウン事業「森のスミカ」を展開している。

「アカリ」のシチリア料理の専門店では、国見町出身のシェフが地元の食材を使って腕を振るう。また、次の世代を育てるために始めたまちづくりの実践講座「エリアデザインラボ」には、県内の高校?大学生、若者を中心に毎年約30人が参加する。今年で4年目となるが、大人になっても継続的に参加する人や地元の食材を使ったスナックを開業する人が現れるなど、若い人が町に関わる「関わりしろ」が広がり始めている。

町の魅力をさらに高めるために、2年前から進めてきたのがエコタウン事業だ。もとは駐車場だった駅前の土地を買い取り、分譲する際は、高い断熱性能で省エネで過ごしやすい家にすることはもちろん、デザインや家の間に塀を建ててはいけないこと等を条件にする。外観の一体感や住民同士の交流のしやすさが魅力となり、不動産の価格が維持され、経済的メリットも大きくなると考えている。現在は、カフェとゲストハウスを組み合わせた宿泊施設や共同住宅の計画が進んでおり、一般分譲は今秋以降に始める予定だ。

今後は国見町の農産物の生産地としての魅力を高めるために、地元の食材を使った飲食店や加工場の誘致に注力していきたいとのこと。「これからのまちづくりは、各地域が持つ資源や特色を生かしていくことが大事」と語る。岩手県出身の37歳。二児の父。(克)

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