フロント/話題と人榎 剛史さん(気候変動に関する政府間パネル(IPCC)インベントリータスクフォース共同議長)

2023年10月13日グローバルネット2023年10月号

国際経験を生かして、どの国でも使いやすい方法論を作る

榎 剛史(えのき たけし)さん
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
インベントリータスクフォース共同議長

今年7月、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の総会において、第7次評価報告書作成に向けて、インベントリータスクフォース(TFI)の共同議長に選任された。TFIは、気候変動の原因である温室効果ガスの排出量・吸収量を算定するためのガイドライン作成を担う部門。現在、パリ協定の下では、全ての締約国がインベントリーの作成に際してIPCCのガイドラインを使わなければならないと定められている。また、目標達成に向けて世界全体の進捗を確認・評価するプロセス「グローバルストックテイク」(GST)は2021年に始まり、今年11月に開催される気候変動枠組条約のCOP28では、最後のステップである成果物の検討が実施される。各国政府がより高精度で信頼性の高い温室効果ガスの排出量算定を行うために、TFIの役割が一層重要になっている。

榎さんはアメリカで生まれ、高校卒業まで過ごした。「グローバルな問題に対して、地球環境や人間を守るには、全ての国が協力しなければ」との考えで、慶應義塾大学で国際関係論を、その後、アメリカ・マサチューセッツ州のタフツ大学大学院で環境政策や公共政策を学んだ。大学院在学中に、同州の小さな町でインベントリーを作るインターンに参加したことがきっかけで関心を持ち、卒業後、インベントリー作成支援を行っていた日本の民間シンクタンクに入社。初めは日本国内の業務に関わっていたが、海外の大きな案件に携わりたいと思い、当時始まろうとしていた日本政府による途上国のインベントリー作成能力向上プロジェクトに志願した。2008~22年の15年間、計4ヵ国(インドネシア、ベトナム、モンゴル、パプアニューギニア)で、現地の担当者にIPCCのガイドラインを教えたり、データの収集や計算を手伝うといった支援に関わった。「インベントリーを精緻化するための検討プロセス」にこの仕事のやりがいを感じるという。

第7次評価サイクルでは「短寿命気候強制因子(SLCF)排出量計算に関する方法論報告書」の作成も決まっている。これまでの国際経験を生かして、「途上国のそこまで専門性の高くない担当者でも使いやすい方法論を作りたい」と抱負を語った。46歳。(克)

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