環境条約シリーズ 380プラスチック条約の政府間交渉委員会

2023年11月15日グローバルネット2023年11月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

年間約800万トンのプラスチック(プラ)ごみが海に流出しており、2050年にはその重量が世界の魚の重量を超えると試算されている。プラごみは海洋の生物や生態系だけでなく水産業や観光業にも大きな損失を及ぼし、世界で年間130億ドルの費用負担が生じている。そのため、プラごみの削減とともにプラスチック製品の生産削減と再使用の促進も求められている。それに応えて、18年の主要7ヵ国首脳会議や19年の主要20ヵ国首脳会議はプラごみ対策を含む宣言を採択し、バーゼル条約も19年に附属書ⅧとⅨを改正してプラごみ規制を強化した(本誌19年7月)。

それらを受けて、国連環境総会(本誌14年9月)の第5回会合の再開会合(UNEA5-2:22年)は、「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力のある国際条約に向けて」という決議を採択した。それにより、プラスチックの生産から廃棄までを扱うこと、効果的な対策を規定する条約を策定すること、策定作業を24年末までに完了させることが決まった。その作業は政府間交渉委員会(INC)に委ねられ、条約の目的、プラスチックの持続可能な生産と消費の促進、海洋プラ汚染の削減のための協調的取組、国別行動計画の策定・実施・更新などが検討される。INCは政府代表以外の利害当事者の幅広い参加を基本としており、22年末のINC-1では、直前に開かれた多面的利害当事者会合に1,000人以上が参加し、また、会期中にも利害当事者意見交換会が開かれた。

23年5月末からのINC-2では、交渉の基礎となる条約案を議長がINC-3までに作ることとされた。しかし、世界共通の拘束的削減基準とするかあるいは各国の実情に応じた自主的な削減計画とするか、また、製品・素材の生産を規制するか否かのような基本事項について、まだ参加国間で意見が分かれている。

なお、INCに並行して、漁船安全ケープタウン協定は漁網などのプラごみ対策を含む操船規則を強化した (本誌22年6月)。また、バーゼル条約はプラごみ適正処理指針を23年5月に改訂した。

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