フロント/話題と人藤田 香澄さん(一般社団法人大崎SDGs推進協議会 ディレクター)

2024年01月18日グローバルネット2024年1月号

リサイクルの町から住民参加型のリサイクル方式を
他の地域、そして世界に

藤田 香澄(ふじた かすみ)さん
一般社団法人大崎SDGs推進協議会 ディレクター

資源リサイクル率日本一を14回達成し、「リサイクルの町」として知られる鹿児島県大崎町。埋め立て処分場の残余年数の逼迫をきっかけに、ごみ焼却場の新設でなく処分場の延命化を選び、「住民によるごみの27分別」という徹底したリサイクルが行われてきた。町のごみリサイクル率を80%以上に高めているのが、ごみの6割を占める生ごみと草木などを低コストで完熟たい肥化する取り組みだ。

大崎町と県内の放送局や金融機関など6団体が参画する大崎町SDGs推進協議会では、町が長年取り組んできたたい肥化の仕組みを他の自治体へ広げていく「ALL COMPOST PROJECT」を立ち上げた。生ごみたい肥化に関心のある自治体を募集し、静岡県西伊豆町、長崎県対馬市などで実証実験が行われた。藤田さんはこのプロジェクトを担当。「住民を巻き込んでいくノウハウも提供し、導入につながれば」と期待を寄せる。

藤田さんは0才から中学1年生まで父親の仕事で南太平洋の島国のツバル、キリバス、フィジーで育った。日本に帰国後、高校の卒業研究でツバルを取り上げ、気候変動による海面上昇や干ばつの影響、住民の将来への危機意識を知った。そこで問題解決のための国際社会での対話を知りたいと大学で国際関係を学んだ。東京大学大学院では公共政策を専攻し、グローバル化により外交とも深く結びつく地方行政や政治にも興味が広がった。卒業後は神奈川県内のIT企業に就職したが、「リサイクルの町から世界の未来をつくる町へ」という大崎町SDGs推進協議会のビジョンに魅力を感じて転職。2021年3月に大崎町に移住した。

そして1936年の町政施行以来、女性町議がいなかった町議会で、「女性や若者の声を伝えたい」と2023年4月の町議選挙に立候補。最年少28歳でトップ当選した。「廃棄物や女性の活躍推進など、さまざまな問題は地域に住む住民がどう暮らしていきたいかにつながっている。住民や行政とじっくり対話しながら問題解決に取り組んでいきたい」と語る。

海外15ヵ国以上からも視察者が訪れる大崎町の住民参加型のリサイクル方式が、藤田さんらの手により日本各地、そして世界に広がり始めている。(M)

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