NSCニュース No.148(2024年3月)「エコアクション21オブザイヤー2023」ソーシャル部門について

2024年03月22日グローバルネット2024年3月号

NSC共同代表幹事、横浜国立大学名誉教授、放送大学客員教授
八木 裕之(やぎ ひろゆき)

エコアクション21オブザイヤー

環境マネジメントシステムであるエコアクション(EA)21の認証企業を対象とした、エコアクション21オブザイヤー2023の受賞企業が公表された。

日本の上場企業は有価証券報告書などにおいてサステナビリティ情報の開示が求められるようになった。そこでは、気候変動関連情報に代表されるように、サプライチェーン全体の活動と情報の共有が不可欠であり、すべての企業にサステナビリティ経営への取り組みが必要になっている。

EA21の表彰制度は、こうした状況を踏まえて、環境経営レポート部門と社会課題の解決に貢献する取り組みを対象とするソーシャル部門から構成されている。今年度のソーシャル部門の金賞(環境大臣賞)は株式会社常磐植物化学研究所、銀賞は株式会社静鉄ストア、白鷺電気工業株式会社、銅賞は日本ゼトック株式会社、株式会社沖縄計測、株式会社マスパック/株式会社マスパックプロダクツである。

株式会社常磐植物化学研究所の取り組み

同社は、植物化学の専門企業であり、医薬品原薬、化粧品原料、健康食品原料、食品添加物、研究用試薬などを製造・販売している。世界一の植物化学企業を目標として、行動規範、サステナビリティ方針が策定され、全社員への浸透が図られている。

活動は、サステナビリティ統括室、サステナビリティ推進室を中心に、全社員によって行われ、取り組み内容はESGレポート、HP、SNSなどを通じて発信されている。EA21、事業継続力強化、公開講義、共同研究活動、寄付活動、健康経営、働きやすい職場づくりなどに取り組み、99%カーボンニュートラルの実現、GXリーグ基本構想への参画、健康経営優良法人認定などの成果を上げている。

サステナビリティ経営を持続的に実現するために、サステナビリティ方針、SDGs目標と連動した業務体制、人事評価への組み込みといったガバナンス体制が構築されている。

株式会社静鉄ストアの取り組み

同社は、静岡鉄道のグループ企業として、静岡県を中心に小売業を展開している。百年構想を掲げ、社会的課題、マテリアリティに基づきながら、その羅針盤として人材育成、食育推進、地域貢献、環境保全を提示し、CSVの実現を目指している。

環境管理責任者、総務・SDGs推進課を中心に、環境推進リーダー、エコアクションカード、SDGs推進レポート、SDGs研修などによって社員の情報共有が図られ、SDGs宣言ボード、フードバンク、職業体験、社内コミュニケーション活性化、移動スーパー、KITE-GO(小型店舗)、統合物流センター、顧客参加型避難訓練などの取り組みが行われている。

百年構想領域ごとに、課題、目標、成果などが体系的に把握され、レポートの発行、環境負荷データの共有、従業員へのヒアリングなどを通して、CSV経営が持続的に推進されている。

白鷺電気工業株式会社の取り組み

同社は、熊本を中心に、電気・エネルギーに関連する多様な事業を展開している。EA21とSDGs活動を経営戦略として捉え、経済的利益と社会的利益を同時に追求するハイブリッド型の経営を目指している。

経営戦略室がその推進を担っており、活動は経営計画に反映され、従業員に落とし込むための組織作りが行われている。EA21推進委員会では実施状況や問題意識の共有が図られ、改善策の提案が行われるなど、社員とのエンゲージメントが推進されている。

インターンシップの受け入れ、NPO法人を中心とした地域貢献活動、生物多様性の保全などに取り組むと同時に、将来に向けたグローカル化とEV化を進めるために、外国人従業員の本格採用、ZEH-M Readyの社員寮の建設、EVバスの活用、カーボンニュートラル支援などが実施されている。
ZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンションを示す基準の一つ)

ここでは、ソーシャル部門の金賞・銀賞受賞企業の取り組みを紹介したが、サステナビリティ経営は情報開示への対応だけでなく、変化していく社会的ニーズや課題に持続的に対応し、成長していくために不可欠な戦略として捉えることが重要であり、ソーシャル部門の受賞企業や応募企業の取り組みからは、戦略の深化と広がりが急速に進んでいることが読み取れる。

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