環境条約シリーズ 384森林減少に関わらない産物のためのEU規則

2024年03月22日グローバルネット2024年3月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

23年6月9日に、森林減少に関わらない産物のためのEU(ヨーロッパ連合)規則(2023/1115)(本誌24年2月)が公布された。その背景には、FLEGT(森林法の執行・施策管理および貿易)のような違法伐採対策(本誌05年5月)にもかかわらず世界の森林の減少・劣化は続いていること、また、農地転用による悪影響も大きいがその対策は取られていないことがある。そのため、本規則は、世界における森林の減少・劣化、温室効果ガスの排出、また、生物多様性の消失にEUの消費活動が加担しないことを目的としており、EUの「相当の注意義務」枠組みの上に構築された。その対象地は林地と農地に、対象産物は、木、牛、アブラヤシ、ゴム、大豆、ココアおよびコーヒーに広げられた(家具、印刷された紙類、牛皮革、グリセリン、タイヤ、チョコレートなどの、それらの派生品を含む)。

事業者(EUへの上市者またはEUからの輸出者)は、関連情報を収集し、20年末日以降に森林の伐採または劣化が生じた土地で生産された産物ではないこと、生産国法令を遵守して生産されたことを確認し、また、供給網をさかのぼって森林への危険性を評価し、生産地の森林減少危険度に応じて軽減措置を取る。その上で、「相当の注意義務」の遂行声明書とともに産物関連情報を自国の管轄当局に提出する。管轄当局は、産物関連情報を公表し、EU委員会が認定する生産国ごとの森林減少危険度(低・標準・高)に応じた割合(低1%・標準3%・高9%)に従って抽出した事業者に対して「相当の注意義務」の実行を検査し(高認定国には取引量の9%も抽出検査対象)、違反事例に対する販売差し止めや処罰などを行い、国内実施についてEU委員会に報告する。なお、生産国に対しては関連する法・経済・社会制度の改善への支援が行われる。

本規則は6月29日に発効したが、そのうち上記の規制措置部分は、1年半の対応準備期間後の24年12月30日から適用(同日に、木材規則(995/2010)は廃止)され、また、中小業者に対しては更に半年後の25年6月30日から適用される。

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