特集/イベント報告 Refillサミット2024 in 北陸 公開セッション ひろげよう!リフィル&リユースのまちづくり<基調講演>資源循環を地域の新たな産業に
2025年03月14日グローバルネット2025年3月号
一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事
株式会社ECOMMIT 取締役CSO
坂野 晶(さかの あきら)さん/
本特集では、公開セッションでの、基調講演と特別報告、そして地域でリフィルの活動を推進する人々と行政、事業者、専門家によるディスカッションの概要を紹介します。
現在三つのわらじを履いています。一つ目のゼロ・ウェイスト・ジャパンでは自治体やその地域の団体と一緒に、地域の中で資源循環の仕組みを作る活動をしています。二つ目の一般社団法人Green innovation では若手のイノベーターを育成しようと、会社員、官僚、自治体職員、また公募で集まった大学生向けの研修を行っています。三つ目が株式会社ECOMMITで、資源循環のインフラをビジネスとして作っている会社です。
地域に合ったゼロ・ウェイストを
ゼロ・ウェイスト・ジャパンのルーツは、2003年に日本初のゼロ・ウェイスト宣言を行った徳島県上勝町にあります。宣言では「地球を汚さない人づくりに努めます!」「ごみの再利用、再資源化を進め、2020年までに焼却、埋め立て処分をなくす最善の努力をします!」「世界中に仲間をつくります!」の3つを掲げました。宣言の背景には、地方のごみ処理の歴史と重なるように野焼きが禁止になり、焼却炉を造ったものの、小型の焼却炉が規制され、山口県まで運ばないとごみが焼却できなくなるという地域課題がありました。
上勝町はごみの分別が45種類あることで有名ですが、社会の仕組みを作るベースの考え方を変えてきた点が大事だと思っています。燃やす前提でごみ処理が仕組み化されてきたのが日本の廃棄物処理の歴史ですが、上勝町では「リサイクルできるか」「まだ使えるか」という視点で分別の数が増え、生ごみは自家処理してもらうようにするなど、いろいろな仕組みが生まれました。
上勝町のリサイクル率は80%を超え、日本のリサイクル率の約19%を大きく上回るという成果を出している一方、リユースも進んでいて、町民が持ち込み、持ち帰ることができるリユースショップで、毎年90%以上(重量換算)持ち帰られているという実績もあります。ごみ処理費用が削減できていることに加え、ごみステーションが人も物も情報も集まる場所になり、町づくりの拠点としておしゃれに生まれ変わっています。
上勝町には国内外からたくさんの方が視察に来ます。海外の方は「自分たちも取り組みたい」と帰っていくのですが、国内の方の大半は「自分たちには難しい」と言って帰っていきます。地域ならではのやり方を考える余地があるということで、ゼロ・ウェイスト・ジャパンは他の地域でもできることを証明したいと、今は上勝町から離れ、いろいろな地域のお手伝いをしています。
例えば栗菓子が有名な長野県小布施町は、栗のいがを炭にし、バーベキューの着火剤として町の特産にする試みをしています。栗をきっかけに農家や菓子店が興味を持ってくれるように、何から始めるかによって皆さんが関心を持つきっかけが変わるかもしれないと思い、町づくりの中にゼロ・ウェイストを置いています。
また、島根県雲南市は市民活動が活発な地域なので、若手イノベーターとして育った大学生に来てもらい、コミュニティコンポストを70基以上作り、地域の拠点に置きました。愛着を持てるよう子どもたちとコンポストにお絵描きをしたり、コンポストにプラスチックを埋めて、10日たっても消えていないことを一緒に見て勉強したりしています。行政にも情報共有をしたところ、翌年からはコンポストの補助金制度が始まり、今も続いています。
一方福井県鯖江市はごみの分別が進んでいる地域ですが、マンションや集合住宅に入居された自治会未加入の方にアプローチしています。また、メガネなどものづくりも盛んな地域ですが、産業廃棄物を自治体として把握していなかったため、環境部門と産業部門をつなぐ試みを行っています。
上勝町ではゼロ・ウェイスト認証という企業向けの仕組みを始め、今も運用しています。飲食店など認証を受けた店を地図に載せ、視察に来た方に紹介して来店を後押ししています。マイボトルやマイ容器もOKいうマークもあり、リフィルとの親和性もあります。
また、量り売りやバラ売りをしてくれるお店を増やす取り組みも行いましたが、個人商店では商品開封後、売り切るのは難しく、ハードルが高いと言われました。そのため飲食店と連携し、お米や調味料など原材料として仕入れているものを、一部無理のない範囲で量り売りにしたところ、こだわりの原材料をアピールできるチャンスにもなると人気になりました。上勝町はインターンシップや就農体験で短期滞在人口を呼び込んでいますが、量り売りは短期滞在者のニーズとも相性が良かったです。
生ごみ削減の取り組み
各地域で取り組んでいける大きな分野は生ごみです。小布施町では飲食店から出た生ごみで堆肥を作り、農家に戻す実証的な取り組みを行っています。剪定枝も炭にする試みもしています。有機物を炭にしたバイオ炭を農地に入れると炭素を固定する効果があり、温室効果ガスの排出削減につながり、クレジットとしてお金が生まれ、取り組む農家に農林水産省がお金を出す動きもあるので、地域でお金と資源が回るチャンスだと注目しています。
また、雲南市ではお寺や保育園など、地域の拠点にもコンポストを作っています。
ゼロ・ウェイスト・ジャパンは他の2団体(ローカルフードサイクリング株式会社、株式会社fog)と共催で、2030年までに「生ごみ焼却ゼロ」の達成を目指し、「生ごみ焼却ゼロプラットフォーム」という活動を始めました。コンポストの普及をデータ化してインパクトを出し、政策に盛り込む働きかけをしています。
行動変容をどう生み出すか
ECOMMITでは、ごみ処理施設に集まったものや家庭ごみからまだ使えるものを救う方法を増やそうと、自治体と取り組んでいます。環境省の統計では、洋服は「手間がかからない」という理由で68%が可燃ごみに出されています。そこで、身近に回収場所が増えると行動が変わるのではないかと、郵便局やショッピングセンター、マンション共用部に回収ボックスを置く取り組みもしています。
アンケートによると、日頃洋服は新品を買い、「少しは環境に良いことをしたいと回収ボックスに持ってきた」という方が大半でしたが、回収に出すことを1年続けた結果、「捨てる以外の選択肢を考えるようになった」「買う前に考えるようになった」との回答が得られました。
「意識を変えてから行動が変わる」だけでなく、「行動を変えると意識が変わる」。行動変容をどう生み出すかも大事です。まさに行動変容のきっかけを作っておられるリフィルの取り組みも大事だと思います。