特集/イベント報告 Refillサミット2024 in 北陸 公開セッション ひろげよう!リフィル&リユースのまちづくり<特別報告>能登被災地支援でのリユース食器活用
2025年03月14日グローバルネット2025年3月号
地域環境デザイン研究所エコトーン代表理事
太田 航平(おおた こうへい)さん
本特集では、公開セッションでの、基調講演と特別報告、そして地域でリフィルの活動を推進する人々と行政、事業者、専門家によるディスカッションの概要を紹介します。
2Rの視点と仕組みづくりが社会を変える
私たちはRefill京都としてRefill Japanの地域Refillとしても活動しています。お祭りやイベントなどで、洗って繰り返し何度も使えるリユース食器の利用を提案しており、2004年からはレンタル事業をスタートさせ、国内では最大規模を誇っています。リデュース・リユースの仕組みづくりは難しく、いろいろなステークホルダーが集まって共に課題解決することが必要です。
今まで京都の祇園祭や大阪の天神祭をはじめ、多くのお祭りやイベントで取り組みが実現し、大阪・関西万博でもリユース食器が導入されることになり、われわれが取り組みを行います。しかし、イベント全体で見るとまだ一部に限られています。
イベントごみは日常から出るごみ全体の1%にも満たないですが、家庭から出るごみの組成と似ているため、リユース食器導入の取り組みが日常にも応用できるという前提があります。
今回は、地震と9月(昨年)の豪雨で大変な境遇の中で、能登半島被災地で何ができるのか考え、取り組んできたことを紹介します。
能登被災地での活動
20数年前から野外のイベント会場でも使えるように改造した食器洗浄機を保有していました。食器洗浄機というのは飲食店で使われる想定で作られているものなので、電気や水道が必要ですが、手洗いよりも洗浄機を使った方が水の使用量も環境負荷も圧倒的に少ないということで、お祭りやイベントの現場では100V電源で稼働し、プロパンガスでお湯を沸かせるように改造した食器洗浄機を使用していました。しかし、イベント会場などの現場で使うには人手が必要で、インフラも整えなければいけないため、最近はあまり使っていませんでした。
そんな中、能登半島で震災が起こりました。発生した昨年1月1日から先遣隊が入り、素早く現地で活動していた一般社団法人オープンジャパンの知人から、2月に入り協力要請がありました。当時は道路が復旧しないと自衛隊も含めた支援者が入れないので、発災直後から、何とか道が通れるようにしようとオープンジャパンをはじめいくつかの団体が道路の整備を始めていました。被災地は混乱していて、支援物資をどう届けるかなど、市民が中心になって自治体がやり切れないところをサポートしながら支援体制の構築を始めていました。
被災者の方々はいつ家に帰れるのかわからず、ライフラインも止まり、非日常をどう乗り切るか不安な状態で避難所で生活されていました。ごみの収集運搬や焼却施設が止まり、水も出ない、電気が来ていないところがほとんど、という状況の中で、被災者の皆さんは使い捨ての容器にラップをかけて食事をするという、寂しくつらい状態でしたので、洗浄機とリユース食器を貸してくれないかと相談を受け、私たちの活動がスタートしました。
水や電気の確保が問題でしたが、全国からいろいろな技術を持った災害支援ボランティアが現地に集結していたので、皆の技を駆使し、電気を使わずポータブル電源だけで稼働できるようにした洗浄機に改造し、軽自動車の荷台に積み、炊き出し現場に行きました。水は地下水をくみ上げてポンプを活用しました(写真①)。

写真① 軽自動車の荷台に積んだ洗浄機。
水は地下水をくみ上げポンプを活用した。
リユース食器は2014年に東日本大震災を契機にリユース食器ネットワーク参加団体に配備していた備蓄用も含めて現地に持ち込み、ほぼ毎日、さまざまな避難所などでの炊き出しに活用してもらいました(写真②)。

写真② 避難所などにリユース食器も持ち込み、炊き出しに活用してもらった。
伝統工芸の輪島塗を取り戻す活動として、被災して流され汚れてしまった輪島塗の食器を地元の方がかき集めて炊き出しに使うようになってからも、洗浄機が活躍しました(写真③)。
現地で約半年間活動しました。今は水道が復旧したので私たちの洗浄機ではなく、被災者自ら食器洗浄機を調達して、ごみを減らしながら豊かな自分たちの生活を取り戻そうとされていま

写真③ 輪島塗の食器を炊き出しに使うようになってからも洗浄機が活躍。
す。
災害時の課題
被災地に洗浄機を届けるため、運搬用のトラックのレンタルや備品の調達など約40万円の資金が必要でした。自分たちの持ち出しでは足りませんでしたが、公益財団法人京都地域創造基金が助成金を出して、今回の活動を支えてくださいました。
また、全国の仲間と緊急時にどう連携するか、いつどのように情報を得るのかなどを皆が知っておく必要があると思いました。
さらに、被災地では日常の生活を取り戻すことがまずは大切で、ごみの対応などは後回しになりがちなのですが、被災者に寄り添ったリユース容器や洗浄機の活用について、事前の研修や情報提供が必要です。
今回、もっと多くの人に呼びかけて連携できたのではないかという反省もあります。現地で活動する団体への環境対策パッケージの提供方法や、全国の仲間とのネットワークの構築、可能な支援のリスト化などが課題となりました。
また、資金がないと取り組みも進まないので、寄付も含め資金調達をどうするのか、助成金情報などを日頃から収集しておく必要も感じました。
今回の反省や新たに見つけた課題を今後に生かしていきたいと思います。
能登半島地震で被災した石川県能登町で支援活動を行っている災害支援団体のオープンジャパンとリユース食器ネットワーク参加団体等が連携し、リユース食器やリユースカップの導入、運用の支援を行いました。地球・人間環境フォーラムからは300mlサイズのリユースカップ600個を寄付しました。また、ぐんまリユース食器センターから皿200枚、食器メーカーの株式会社台和からも箸600膳やスプーン600本のほか、トレーや皿等を寄付いただき、活用してもらいました。
厳しい寒さの中、温かい食事を提供するために炊き出し支援が行われていましたが、多くの使い捨てごみが出ていたため、震災の支援をしつつも、能登の自然環境を汚さない取り組みとして、リユース食器が利用されました。当フォーラムとしても地震等の災害時に迅速にリユース食器や洗浄機等を被災地に届けられるよう、災害支援ボランティア団体等との連携を進めてきたいと考えています。