イベント報告 Refillサミット2024 in 北陸 公開セッション ひろげよう!リフィル&リユースのまちづくり<ディスカッション>リフィルスポットで おもてなし&サステナブル

2025年03月14日グローバルネット2025年3月号

パネリスト:
株式会社ソリッドラボ/ ものづくり工房トンカンテラス代表
黒田 悠生さん
Refill 福井
大道 哲平さん
石川県生活環境部カーボンニュートラル推進課
寺田 早織さん
Refill いしかわ・金沢
中村 早苗さん
一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事、株式会社ECOMMIT取締役CSO
坂野 晶さん

モデレーター:
水Do! ネットワーク事務局長 瀬口 亮子さん

 給水スポットとリフィル(Refill、再び詰める)行動を広げるプラットフォーム、リフィルジャパンは、昨年12月8日、全国で活動する地域団体が一同に会する第6回「Refill サミット」の開催にあわせて、公開セッションを開催しました。
 本特集では、公開セッションでの、基調講演と特別報告、そして地域でリフィルの活動を推進する人々と行政、事業者、専門家によるディスカッションの概要を紹介します。

 

瀬口:今年(2024年)3月の北陸新幹線の金沢~敦賀間延伸開業を機会に、町づくりにリフィルの活動を生かそうという動きが活発であることから、今回Refillサミットを北陸の福井と金沢で開催しました。皆さんのそれぞれの活動を報告していただけますか。

大道:普段は福井県敦賀市で旅行会社を営んでいます。ハワイ旅行をメインにしていた会社だったのですが、コロナ禍でお客様を送客できなくなり、地元の敦賀市にある「北陸のハワイ」と呼ばれる無人島、水島を知ってもらうことにしました。しかし調べてみると、世界の海で起こっている状況と同様に海ごみがひどいことがわかり、それ以降北陸のハワイ水島と、本場ハワイの海両方を守れるような活動をしたいとさまざまな試みを始めたのがきっかけで、リフィルの活動を始めました。

 有志を募って4名でスタートしたRefill福井は活動範囲も福井県全域に広げ、給水スポットは80件ぐらいになっています。

黒田:トンカンテラスというものづくり工房を運営しています。給水スポットに登録し、リフィルの水道水は工房の外にあります。

 ものづくりが好きで、どう社会と接点を持てるか考え、「プレシャスプラスチック福井」という活動を立ち上げ、ペットボトルのキャップがどうやってどういうものに生まれ変わるのか、出張で子どもたちの目の前でリサイクルの現場を見せるなど、いろんな人と関わりながらプラ問題を解決していこうとしています。

 自分でものが作れる人が増えることがごみの減量にもつながっていくでしょうし、何か問題が起きた時に自分で解決できるということは強い地域をつくることになるのではないかと思っています。

中村:Refillいしかわは、「石川の水で未来を変える」「まちのオアシスを増やそう」というコンセプトで2019年から活動しています。豊かな水資源を生かしたボトルユーザーに優しい街づくりを目指し、水の良さを知ってもらうために、イベントなどで給水ステーションを設置したり、アクションウォークなどをして楽しんだり、活動している仲間と問題共有するフォーラムなどを開催してきました。

 サステナブルで災害にも強い給水スポットの拡大を目指しています。2023年3月、2日間にわたり金沢駅で水道直結型給水ステーションを設置し、実証実験を実施しました。地元の人だけでなく、多くの観光客の皆さんからも好評で、寒い日でも給水の需要があることがわかりました。今後は公共や交通拠点に注目し、新規スポットの設置を提案し、熱中症対策や災害対策など、これまで頂いた多様な市民の意見を反映させていきたいと思っています。

寺田:石川県庁の生活環境部カーボンニュートラル推進課に所属しています。石川県では、令和4年9月に2050年カーボンニュートラル宣言を行い、長期目標として2050年カーボンニュートラル、中期目標として、2030年の温室効果ガス排出量を2013年度比で50%削減するという目標を掲げています。

 リフィルの取り組みは温室効果ガスの削減とカーボンニュートラルの実現に貢献するということから、県としても進めていきたいと考えています。県の取り組みとしては、「気候変動対応アクションプラン」の実施を呼びかけ、「マイバッグ・マイボトルを利用する」という項目を設定しています。

 そして、「いしかわエコアプリ」というスマートフォンアプリを開発し、マイボトルの利用や、注文した商品の食べきり、食べ残しの持ち帰りなど行うとポイントが獲得できる仕組みにより、県民の環境配慮に対する行動を促進をしています。また、県庁においても会議などでペットボトル飲料を提供せず、グラスを使うように努めています。

おもてなしとしてのリフィルの活用

瀬口:北陸では、インバウンドなど多くの方へのおもてなしとして、リフィルを活用できるのではないかと思います。活動の中で感想や手応えなどあればご紹介ください。

中村:イベントで給水ステーションを設置すると素晴らしい水に恵まれていて良かった、と気付く方が多いです。今まで私たちが持っているポテンシャルに気付いていなかったのでしょう。白山市の全域が白山手取川ジオパークとして認定され、ニュースで町が繁栄し、人の交流が生まれたことを知り、価値をもう一度見直す時に来ているんだと思います。

坂野:北陸はお水がおいしいですよね。それをPRするというのは、まさに観光コンテンツの一つでもあるのかなと思います。

黒田:給水スポットは水をくみたくなるような、近づきたくなるようなフォルムの蛇口にするというのが普及には重要かと思います。

 また、工房にお客さんが来ると僕は勝手にコーヒーを入れるのですが、それをリフィルの水道水を使って、「これは実は水道水なんですよ。この水で入れたコーヒー、おいしいでしょ?」と言って意識を変えてもらう。そんなことが今の僕にできそうなことだなと思います。

瀬口:行政の立場から、石川県内の活動がどのように影響してきたか、教えていただけますか。

寺田:石川県内では、多くの県民がリフィルの活動をされていますが、職場でも、Refillいしかわ・金沢と石川県地球温暖化防止活動推進センターとが協働し、「マイボトルで職場へGO!」という取り組みを実施しており、これまでに約200の事業所に賛同いただいていると聞いています。従業員数でいえば約2万人に取り組んでいただいているということで、試算すると年間約1,105トンのCO2が削減できることになります。職場単位でも常にマイボトルを持って行くという意識付けをしていくと、大きな取り組みにつながると思っています。

坂野:実はゼロ・ウェイスト認証にシェアオフィスやコワーキングスペース向けの認証もやっています。その中でオフィスの利用者のマイボトル持参率などを指標の一つにしていて、そんなところを推奨するというのは今でもやれそうだなと思いながら聞いていました。

 さらに、飲み物以外にもお弁当やおやつもリユース食器やリターナブル容器で食べられるよう、オフィスと連携を始めているところもあって、そういうのが次のステップになっていくと思います。

今後の課題と期待

瀬口:リフィルをもっと広げていくためにはまだ課題があると思うのですが、どんな点か教えていただけますか。

大道:仲間との会議で「リフィル商店街」みたいなのが作れるといいよねという話が出ます。そんなにお金もかけず、街をクリーンシティのように、ブランド的に価値を上げることができるので、ある一画だけでもいいので、このエリアならどの店でも水がくめるよとプロモーションしていくのはいいのではないかと思っています。

黒田:プラスチックのリサイクル過程を見せるために、ワークショップみたいなのがあってもいいのかなと思いました。お皿を自分で作り、それを街で使って何かを食べたり詰め替えたりするというのは、能動的に関われるし、楽しみながらできるので、面白そうだと思います。是非一緒にやりましょう。

中村:市民の声をいろいろ集めていますが、なかなか行政や事業者の活動に反映されない。対話の輪を作っていくことが必要だと思います。

寺田:そうですね。行政だけで進めていくというのはなかなか難しいこともあると思っていますので、活動されている方と対話をしながら民間の方が持っていらっしゃる知見を生かして、協働していくことが大事だと思っています。

瀬口:北陸の2つの地域はまだ道なかばではありますが、多くの人が連携しながら活動は確実に前進しています。これを他の地域の人たちも参考にしつつ、リフィルをさらに前進させていければいいと思います。

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