環境条約シリーズ 321EUにおけるネオニコチノイド農薬の制限

2018年12月17日グローバルネット2018年12月号

前・上智大学教授
磯崎 博司(いそざき ひろじ)

2000年代後半から欧米地域においてミツバチの大量失踪が発生し、その原因として、ネオニコチノイド製剤(NNIs)が挙げられている。それを受けて、欧州連合(EU)では、すでに殺虫剤として承認されていた5種のNNIsのうち3種(イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム)については、2013年に承認条件が強化され、蜂類への各種リスクに関する確定情報の提供が義務付けられた。

2015年までに提供された情報は、関連組織により分析された。それらの情報や分析に基づいて、EU食品安全庁は、2018年2月末に3種のNNIsは蜂類に高リスクであるとの判断を示し、その総合レビューを行った上で4月27日にEU委員会へ最終報告書を提出した。EU委員会は、その報告内容に対するパブコメを経て、蜂類へのリスクの防止には3種のNNIsの野外使用を禁止する必要があるとの結論に至り、それらの承認条件に関する規則を以下のように改正した。

3種のNNIsの使用については、常設の温室内での植物防護用途に限定するとともに、散布植物の当該温室外への持ち出しを禁じる。この改正条件は2018年6月19日に発効するが、経過措置が定められている。加盟国は、3種のNNIsに対する既存の認可を、できる限り早く、遅くとも9月19日(猶予期間が認められている場合は12月19日)までに失効させて、改正条件を適用しなければならない。

また、3種のNNIsによる処理をした種子の販売・使用についても、NNIsの使用と同じ制限を課す。この改正条件は2018年12月19日に発効する。

なお、日本では、2013~15年の調査に基づいた農林水産省の報告書(2016年)によると、ミツバチの大量失踪は生じておらず、カメムシ防除用の数種の殺虫剤による被害(全国の巣箱の1%未満)は生じているが、NNIs(上記の3種を含む)が他種の殺虫剤より高リスクとは確認されていない。同様の国も少なくなく、オーストラリアにおいても、ミツバチに対する高リスクを理由とするNNIs規制は行われていない。

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