フォーラム随想やさしいやさい

2021年03月15日グローバルネット2021年3月号

日本エッセイスト・クラブ 常務理事
森脇 逸男(もりわき いつお)

かなり昔の病気の後始末で、何ヵ月かに一度、東京の秋葉原と茨城県のつくばを結ぶつくばエクスプレスを利用する。その都度ちょっと楽しみにしていることがある。さりげなく掲示されている車内のマナー広告だ。

例えば、

「駆け込まず次の電車をマツタケ」

「車内では静かニンニク」

「スマホ操作でぶつからなインゲン」

といった具合に、松茸やニンニク、インゲンといった野菜名を読み込んだ寸言に、それぞれの野菜を擬人化して、駆け込み乗車をしないで次の電車を神妙に待つ良いマナー、あるいは車内で大声を上げて騒いだり、スマホ操作に気を取られて、他の乗客にぶつかるといった困った振る舞いの戯画が、ユーモラスに描かれていて、なかなか面白い。

調べてみると、今は「やさしいやさい」というシリーズだが、野菜の前は果物が主人公で、「めいわくだもの」(迷惑+果物)というシリーズだった。乗客に乗車の際のエチケットをやんわりと教える狙いで、今から8年前に始めたのだという。

 

これまでどんなポスターがあったのかと、同鉄道を運営している首都圏新都市鉄道株式会社のホームページを見てみると、果物シリーズも大変面白く、そうだ、そうだとうなずかされる。

例えば、

「優しい気持ちがいっパイン」→パイナップルが車内マナーを守って譲り合う。

「歩きスマホは危なイヨカン」→近頃本当に歩きスマホが多い。何かにぶつかってけがをしないかと心配になる。

「酒ランブータン」→泥酔して乗車して来る。

「飲み過ぎてべろんメロン」→車内の泥酔は始末が悪い

「置きざリンゴ」→使い終わったペットボトルや空き缶をその辺にポイ捨て、置き去りにする。

「荷物がおじゃマンゴ」→客同士、荷物がぶつかり合ったり、その辺に放置する。

「エスカレーターをかけオリーブ」→駆け降りは危険だし迷惑だ。

「おかまいナシ」→座席に座るのに他人を気にしない。

「話に花がサクランボ」→仲間同士で大声でしゃべり合って、騒がしいことおびただしい。

「手をカシス」→これはいい方のマナー。困っている人やお年寄りに進んで手を貸す。

「音が漏れまクリ」→これは迷惑行為。静かにしてほしいのに、ヘッドホンから音が漏れっ放し。

「まっしぐラズベリー」→前後左右を顧みず、突進。出会い頭にぶつかって痛い目に。

「声が大きイヨカン」→辺り構わず、大声を上げてはしゃぎ回る。

「カチャカチャピコピコピーチ」→電子機器を持ち込んで、電子音やキーのタッチ音、お構い無し。

「寄りかカリン」→見ず知らずの他人に平気で寄り掛かる。

「乗り出シークワーサー」→ホームの柵から身を乗り出す。危険極まりない。

「席をユズる」→老人や体の不自由な人に席を譲る、これはいいマナーだ。

「駆け込ミカン」→発車間際の駆け込み乗車。危険で迷惑だ。

 

「めいわくだもの」がひと巡りして、今は「やさしいやさい」だ。

「リュックは前に持トウミョウ」→周りの人にぶっつけないように大きな荷物は前に抱えて持つ。

「困っている人に手を差し伸べ助ケール」「お手伝いしましょうカブ」→助け合いの気持ちを持ちたいですね。

「座席は詰めて座りまショウガ」「譲りあいにありがトウモロコシ」→一人で二人分の席を占めたりはしない。乗客同士譲り合いの気持ちを持ちたい。

「スマホ操作でぶつからなインゲン」→よく見かける風景です。気を付けましょう。

「手すりにつかまルッコラ」→これもエスカレーターの注意だ。転倒,転落の恐れがあるので、黄色い線の内側に立って、手すりにつかまっていてほしい。

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