NSCニュース No. 130(2021年3月)スウェーデンのコロナ対策と国民の反応、企業の自主的対策

2021年03月15日グローバルネット2021年3月号

環境コーディネーター
高見 幸子(たかみ さちこ)

新型コロナウイルス感染症の世界的拡大により、国内外の企業は大きな影響を受けています。そこで今回から3回にわたり、スウェーデンおよびEUの企業動向について、スウェーデン在住の環境コーディネーター、高見幸子氏に寄稿いただき、コロナ後に企業が目指す経営の在り方について考えます。

国民の信頼を受ける国による独自路線

スウェーデンは、コロナがパンデミックになった昨年の春、多くの国がロックダウンを実施したにもかかわらず、国民の自主的な責任感に任せるという独自路線を取りました。スウェーデンが他の国と違った理由は、コロナ戦略のデザインをしたのが、政治家ではなく公衆衛生庁だったことにあります。

スウェーデンは、伝統的に省庁の独立性と権限が強く、感染病対策は公衆衛生庁の勧告に誰もが従うという図式です。公衆衛生庁に政治的な意図はなく、職員は感染病の専門家たちです。彼らは、ロックダウンによってウイルス感染を止められるという科学的根拠はないと、世界の国からの批判があっても貫き、長期戦になるので、医療崩壊させないように感染を抑える対策が持続可能な対策だと国民に説明しました。しかし、まったく規制がなかったのではなく、とくに高齢者を守るため、70歳以上は外出自粛、高齢者福祉施設の訪問禁止、自宅で仕事ができる人はリモートワークをする、少しでも症状があればすぐ仕事・学校を休む、手をよく洗う、ソーシャル・ディスタンシングなど勧告され、約80%の人たちが自主的に従ったのです。

なぜ、スウェーデン人の省庁への信頼度が高いか。それは、各省庁の職員がその分野の専門家集団であることと、Offentlighetsprincipen(情報開示原則)という法律があり、公の機関は、会議の議事録などは、誰でもアクセスできるようになっており、メディアのチェックが厳しいためです。

感染病に関して素人の政治家ではなく、専門家の公衆衛生庁の職員がほぼ毎日の記者会見でメディア・国民に説明をし、情報開示の透明性が高かったことが国民に安心感を与えました。公衆衛生庁への国民の信頼度は、春は、ヨテボリ大学のSOM Institutetの調査によると81%と非常に高かったのです。

しかしながら、人口約1,000万人の国で、夏の段階でコロナによる死者数は5,000人になり、その90%が70歳以上の、高齢者福祉施設あるいは在宅介護を受けている高齢者だったことで、国内の批判が高まりました。また、第二波は春以上に厳しく、2021年2月には感染者は約60万人、死者数は約12,000人と急増しました。そのため、Demoskopsの世論調査では、59%の国民がもっとコロナ規制を厳しくしても良いと思っているのが現状です。

企業の自主的対策で期待される社会変革

このように緩やかなコロナ戦略であっても、結果として、経済へ大きな影響が生じました。倒産も増え、失業率は8%となっています。政府は、企業に対してさまざまな方法で救済支援をしています。企業側は、公衆衛生庁の勧告に従って、自主的に、店での密を避ける対策から、ネット販売を進めました。スウェーデンは、近年、デジタル化を推進してきていましたが、コロナでそれが一気に加速しました。

ネット販売の増大は、コロナで外出自粛を余儀なくされたお年寄りがネット販売市場に進出したからとのことです。また、キャシュレス社会への移行も進みました。DI経済新聞2020年11月11日の記事によると、Swishという携帯電話番号でのデジタル支払いアプリを74%の国民が使用しており、10年前、40%の現金支払いが、今、10%となっているそうです。

専門家は、2023年には、スウェーデンは、世界に飛び抜けて、完全にキャッシュレス社会になるだろうと予測しています。

しかしながら、企業の自主的対策の中で、リモートワークの推進が最も大きい貢献になったと思います。例えば、ST国家公務員組合のアンケートによると、65%がリモートワークをしており、とても満足していると答えています。12月にAkutelllt Hallbarhet環境雑誌とDI経済新聞がストックホルム上場大手企業100社へのアンケート調査をしました。すると、回答した企業の65%がコロナ後も、リモートワークの選択を社員に提供すると答えています。アフターコロナのスウェーデン社会は、大きく変わろうとしています。

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