環境条約シリーズ 357国連気候変動枠組条約 第26回締約国会議

2022年01月14日グローバルネット2021年12月号

前・上智大学教授
 磯崎 博司(いそざき ひろじ)

2021年10月31日から11月13日までイギリス・グラスゴーにおいて、国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)と、それに併せて、京都議定書の締約国会合、パリ協定の締約国会合、科学技術助言補助機関および実施補助機関の会合などが開かれた。それらに先だって150ヵ国以上が削減目標を更新し、140ヵ国以上が2050年頃の排出ゼロを表明したが、それでも今世紀末には産業革命前より1.8~2.4℃の気温上昇になるとの試算も出された。また、すでに気温は1.1℃上昇しており、各地で甚大な気候災害が生じているという現状の下でCOP26は開かれた。

COP26の懸案事項(本誌21年10月)の一部は難航したが、当初予定を1日延長して合意にこぎ着けた。最終日には、諸決定とともに「グラスゴー気候合意」が採択され、科学と緊急性、適応、適応資金、緩和、資金・技術移転・能力構築、気候変動の影響に伴う損失・損害、パリ協定の実施、協働という各項目について今後の行動が呼び掛けられた。まず、気候危機の緩和に向けて、パリ協定の努力目標である1.5℃を事実上の達成目標と位置付けた。それに向けて、30年までに10年比でCO2の45%削減、50年頃までに排出ゼロの実現、その他の温室効果ガスの大幅削減、併せて、来年に各国の削減目標の見直し、その後も毎年の見直しを要請した。

31年以降については、25年に35年目標、30年に40年目標(その後5年ごとに同様)の通報を奨励した(25年に40年目標という立場の国もあって、「奨励」に弱められた)。また、排出削減対策が取られていない石炭火力発電の段階的削減(中国・インドなどの反対で「廃止」から「削減」に弱められた)および非効率な化石燃料補助金の段階的廃止を要請した。適応のための資金については、先進国に対して25 年までに供与額を19 年水準から倍増するよう求めた。

なお、COP26に呼応して、メタン削減、ゼロ排出自動車、脱石炭火力、石油・ガス廃止、森林保全など、各分野の有志連合の立ち上げが相次いで表明された。

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